編み物の途中で毛糸が足りなくなったり、色を変えたいと考えたときに「毛糸と毛糸をくっつけるには?」と方法を探した経験はありませんか。糸をしっかり結ぶには様々な方法がありますが、中でも簡単でほどけにくい結び方として「マジックノット」が注目されています。この結び方のやり方はとてもシンプルで、かぎ針編みにも棒針編みにも活用できるのが魅力です。この記事では、マジックノットの基本的な結び方を豊富な図解で解説し、有名な「はた結び」との違いも比較します。また、多くの人が抱く「結び目は簡単にほどけるのでは?」という疑問や、「糸が絡まったときほどく方法はありますか?」「糸の固結びのほどき方は?」といった編み物周りのトラブルについても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
- マジックノットの正しい結び方
- はた結びとのメリット・デメリット比較
- 結び目の強度や注意点
- 編み物に関する関連知識やトラブル解決法
マジックノットとは?結び方の基本を解説
- 毛糸と毛糸をくっつけるには?
- 図解で見るマジックノットのやり方
- マジックノットは初心者でも簡単か
- 様々な種類の毛糸で試してみよう
- かぎ針編みでの具体的な活用方法
毛糸と毛糸をくっつけるには?
編み物をしていると、どうしても毛糸が足りなくなったり、デザイン上の理由で糸の色を切り替えたい場面が出てきます。そのような時、古い糸と新しい糸を安全につなぐ必要があります。
毛糸をつなぐ方法には、大きく分けて「結ばない方法」と「結ぶ方法」の2種類が存在します。
毛糸をつなぐ主な方法
結ばない方法:編み地の途中で新しい糸を引き入れ、古い糸端と新しい糸端を数目にわたって編みくるんで始末します。結び目(コブ)ができないため、仕上がりが最も綺麗になるのが最大のメリットです。ウェアなど肌に直接触れるものに適しています。
結ぶ方法:糸同士を直接結んでつなぎます。結び目ができますが、慣れれば素早く糸を継ぎ足せるのが利点です。「はた結び」や、この記事で紹介する「マジックノット」が代表的です。
どちらの方法が良いかは一概には言えず、作る作品や糸の残り長さ、個人の好みによって最適な方法は異なります。しかし、残り糸が短すぎて編みくるむ余裕がない場合や、手軽さを重視したい場合には、「マジックノット」のような結ぶ方法が非常に役立ちます。
図解で見るマジックノットのやり方
マジックノットは、2本の糸がお互いを結び合うような構造になっており、強く引っぱるほど結び目が締まるという特徴があります。一見複雑に見えるかもしれませんが、手順を覚えれば誰でも簡単に行えます。ここでは、新しい糸(ブラウン)と古い糸(グレー)を使って、そのやり方を詳しく解説します。
1. 糸のセッティング
まず、2本の糸を平行に並べます。どちらの糸を上にしても問題ありませんが、ここでは古い糸(グレー)を上、新しい糸(ブラウン)を下に置きます。
2. 右側の結び目を作る
最初に、新しい糸(ブラウン)で古い糸(グレー)に結び目を作ります。
- 新しい糸(ブラウン)の糸端を、古い糸(グレー)の下をくぐらせて上に回し、輪を作ります。
- 作った輪の中に、糸端を上から通します。これは「片結び」と同じ要領です。
- ブラウンの糸の両端(糸端側と糸玉側)をゆっくりと引っ張り、グレーの糸の上でしっかりと結び目を作ります。この時点では、結び目はまだ固定されておらず、グレーの糸の上をスライドできる状態です。
ポイント
ここではまだ仮留めのような状態です。あとで全体を締めるので、きつく結びすぎなくても大丈夫ですよ。
3. 左側の結び目を作る
次に、右側と全く同じことを、古い糸(グレー)を使って新しい糸(ブラウン)の上で行います。
- 古い糸(グレー)の糸端を、新しい糸(ブラウン)の下をくぐらせて上に回し、輪を作ります。
- 作った輪の中に、糸端を上から通します。
- グレーの糸の両端を引っ張り、ブラウンの糸の上で結び目を作ります。
4. 結び目を合体させる
これで、左右に2つの結び目ができました。最後に、この2つの結び目を合体させます。
古い糸の編地側と、新しい糸の糸玉側を、それぞれ両手で持ち、ゆっくりと外側に向かって引っ張ります。すると、2つの結び目が中央にスライドしていき、「カチッ」という感触と共に1つの固い結び目になります。
これでマジックノットの完成です。最後に、結び目のギリギリで余った2本の糸端をカットします。これで糸始末も同時に完了です。
マジックノットは初心者でも簡単か

結論から言うと、マジックノットは編み物初心者の方でも比較的簡単に習得できる結び方です。
最初は左右で同じ動作を反転して行うことに少し戸惑うかもしれません。しかし、構造は単純な「片結び」をそれぞれの糸に行っているだけです。多くの情報サイトでは、2~3回練習すればすぐに覚えられると紹介されており、実際にその通りだと感じる方が多いようです。
特に、伝統的な「はた結び」で挫折した経験がある方にとっては、マジックノットの方が直感的で分かりやすいと感じる場合があります。はた結びは糸の上下関係が複雑に見えることがありますが、マジックノットは「片方の糸でもう片方を結ぶ」という作業を2回繰り返すだけだからです。
初心者が簡単と感じる理由
- 基本的な「片結び」がベースになっている
- 左右で同じ作業を繰り返すだけという単純さ
- 最後に糸を引っ張って結び目を締める工程が分かりやすい
もし難しく感じた場合は、最初は太めの異なる色の糸で練習すると、糸の動きが視覚的に理解しやすくなるためおすすめです。
様々な種類の毛糸で試してみよう
マジックノットは非常に汎用性の高い結び方で、多くの種類の毛糸に使用できます。ただし、毛糸の素材や形状によって、結びやすさや結び目の目立ち方が少し異なります。
相性の良い毛糸
一般的に、ウールやアクリルなど、ある程度摩擦があって滑りにくい素材の毛糸はマジックノットに適しています。糸同士がしっかりと絡み合い、固く締まった結び目を作ることができます。
- 並太~極太のウール、アクリル毛糸
- コットンヤーン(滑りにくい加工のもの)
- ファンシーヤーン(ただし、凹凸が激しいものは結び目が大きくなる可能性あり)
注意が必要な毛糸
一方で、表面がツルツルしていて滑りやすい素材の糸は注意が必要です。
滑りやすい素材の注意点
シルク、レーヨン、サマーヤーン、または一部のマーセライズ加工されたコットン糸などは、摩擦が少ないため、強い力がかかった際に結び目が緩んだり、ほどけたりする可能性がゼロではありません。このような滑りやすい糸でマジックノットを使用する場合は、カットする糸端を少し長めに残し、念のために編み地に数センチくぐらせてからカットすると、より安全性が高まります。
また、非常に細いレース糸などは結び目自体が小さくなるため問題ありませんが、超極太のロービングヤーンのような糸は、結び目がかなり大きくなり目立ってしまう可能性があります。作品のデザインや用途を考えて、結び方が適しているか判断することが大切です。
かぎ針編みでの具体的な活用方法

マジックノットは、かぎ針編みにおいても非常に有効なテクニックです。特に、糸の色を頻繁に変える「編み込み模様」や、大きなブランケットなどを編む際に重宝します。
かぎ針編みでマジックノットを使うタイミングは、主に「前の段の最後の目を編み終えた後」です。新しい段に移る前に、糸をマジックノットでつないでおけば、次の段からはスムーズに新しい糸で編み始めることができます。
エキスパートのヒント
あらかじめ、次に使う色の糸と結んで準備しておくと、作業が中断されずテンポよく編み進められますよ。特に多色使いのあみぐるみなどでは、この事前準備が効率を大きく左右します。
結び目は編み目の中に隠すように編み進めます。細編みや長編みなど、どの編み方でも基本的には問題ありませんが、結び目が少し硬いため、編み地の裏側に来るように調整すると、表側の見た目が綺麗に仕上がります。
例えば、細編みで往復編みをしている場合、結び目がちょうど編み目の頭の真上に来ないように少しずらして糸を引くなど、少しの工夫でより目立たなくさせることが可能です。バッグやポーチなど、内側が見えにくい作品では特に気にせず使えますが、マフラーや帽子など肌に触れるものでは、結び目が肌に当たって違和感を感じる方もいるかもしれません。その場合は、前述の「結ばない方法」を選択するのが良いでしょう。
比較と疑問|マジックノットとは何か深掘り
- はた結びとの違いは結び目の大きさ
- 結び目が簡単にほどけることはない?
- 糸をしっかり結ぶにはこの方法で
- 糸が絡まったときほどく方法は?
- 糸の固結びのほどき方はある?
はた結びとの違いは結び目の大きさ
毛糸を結ぶ方法として、マジックノットとしばしば比較されるのが「はた結び(機結び)」です。はた結びは、その名の通り機織りの際に糸をつなぐために古くから使われてきた、信頼性の高い結び方です。では、マジックノットとはどのような違いがあるのでしょうか。
項目 | マジックノット | はた結び |
---|---|---|
結び目の大きさ | やや大きい | 非常に小さい |
強度 | 非常に強い(引くほど締まる) | 強い |
習得の容易さ | 簡単 | やや慣れが必要 |
糸端の始末 | 結び目ギリギリでカット可能 | ギリギリでカット可能 |
適した用途 | バッグ、ポーチ、あみぐるみなど | ウェア、マフラーなど(結び目を小さくしたい場合) |
最大の違いは「結び目の大きさ」です。はた結びは、糸の絡め方が非常に効率的で、固く締めた際の結び目がとても小さく仕上がるのが特長です。そのため、編み地への影響を最小限に抑えたい場合に適しています。
一方、マジックノットは2つの結び目を合体させる構造上、はた結びよりは少しだけ結び目が大きくなる傾向があります。しかし、その分「引く力」に対して非常に強く、ほどけにくいという絶大な安心感があります。
どちらを選ぶべきか?
とにかく結び目を小さく、目立たなくしたい場合 → はた結び
簡単さや結びの強度、ほどけにくさを最優先したい場合 → マジックノット
このように、それぞれの長所を理解し、作る作品によって使い分けるのが最も賢い方法と言えるでしょう。
結び目が簡単にほどけることはない?
「結び目ギリギリで糸を切って本当に大丈夫?」というのは、マジックノットを初めて使う方が最も気になる点だと思います。
結論として、正しく結ばれていれば、マジックノットが日常生活で簡単にほどけることはまずありません。
マジックノットは、2本の糸がお互いを締め付け合う構造になっています。編み地が引っ張られる力が加わると、結び目は緩む方向ではなく、むしろさらに固く締まる方向に力が働きます。このため、非常にほどけにくいのです。
多くの編み物愛好家がバッグやブランケットなど、ある程度負荷がかかる作品でこの結び方を使用し、その強度を実証しています。全力で引っ張るような実験をしても、糸本体が切れることはあっても結び目がほどけることは稀です。
ただし、以下のようなケースでは注意が必要です
- 結び方が不完全:左右どちらかの結びが緩いまま合体させてしまうと、強度が落ちる可能性があります。最後にしっかりと左右に引いて、結び目が固く締まったことを確認してください。
- 滑りやすい糸:前述の通り、シルクやレーヨンなどの滑りやすい糸は、他の素材に比べて緩む可能性がわずかに高まります。心配な場合は、糸端を残して編みくるむ処理を併用すると万全です。
どうしても心配な方や、プレゼントにする大切な作品を編む際は、無理にギリギリでカットせず、2~3cmほど糸端を残して、とじ針で編み地の裏側にくぐらせてからカットすると、精神的な安心感も得られます。
糸をしっかり結ぶにはこの方法で
マジックノットは糸をしっかり結ぶための優れた方法の一つですが、編み物全般において「糸をしっかり結ぶ」ための普遍的なコツも存在します。それは、「結び目をゆっくり、均等な力で締める」ことです。
急いで強く引っ張ると、結び目の一部だけに力がかかり、いびつな形で固まってしまうことがあります。これでは、結び目の強度を最大限に引き出すことができません。
糸をしっかり結ぶための共通のコツ
- 結び目の形を作ったら、まずはゆっくりと糸を引き、形を整えながら締めていきます。
- 結び目が小さくなってきたら、最後に均等な力で「キュッ」と締めます。マジックノットの場合は、左右の糸を均等な力で水平に引くことが重要です。
- 結んだ後、結び目の周りの糸が不自然に緩んだり、引きつったりしていないかを確認します。
この「ゆっくり、均等に」という原則は、マジックノットやはた結びはもちろん、靴紐を結ぶといった日常生活の様々な場面でも応用できる考え方です。特に毛糸は伸縮性があるため、急激な力で引っ張ると糸が伸びてしまい、後から緩みの原因になることもあります。丁寧な作業を心がけることが、結果的に丈夫な作品作りにつながります。
糸が絡まったときほどく方法は?
編み物をしていると、糸を結ぶ場面だけでなく、意図せず糸が絡まってしまうトラブルもつきものです。特に、毛糸玉の中心から糸を引き出そうとして失敗したり、複数の毛糸を同時に扱っていると、気づいたときには複雑な「知恵の輪」状態になっていることがあります。
糸が絡まってしまった場合、焦って引っ張るのは禁物です。さらに固く絡まってしまう原因になります。
基本的なほどき方
- 全体を広げる:まずは絡まった部分をテーブルなどの広い場所にそっと広げ、全体の構造を把握します。どこがどう絡まっているか、中心はどこかを見極めます。
- 糸端を見つける:糸玉につながる方の糸端を見つけ、そこから少しずつたどっていきます。
- 緩める:絡まっている塊の中心部分を、指で優しくほぐすようにして、少しずつ空間を作ります。塊が少しでも緩むと、糸を動かす隙間が生まれます。
- ループをくぐらせる:糸端や、糸玉側の糸を、できているループ(輪)から一つずつ慎重にくぐらせて外していきます。とじ針やかぎ針の先を使うと、細かい作業がしやすくなります。
究極のコツ
最も大切なのは「忍耐」です。時間のある時に、リラックスして取り組むのが一番の近道ですよ。音楽でも聴きながら、パズルを解くような気持ちで向き合ってみてください。
どうしても解けない場合は、最終手段として絡まっている中心部分をカットすることも考えられますが、その前にこれらの方法を試す価値は十分にあります。
糸の固結びのほどき方はある?
意図せずできてしまった「固結び」をほどきたい、という場面もあります。特に、きつく締まってしまった小さな結び目は、指先だけではなかなか解けません。そんな時に役立つ方法をいくつか紹介します。
針を使う方法
最も一般的なのが、先の細い針を2本使う方法です。マチ針や、細いとじ針などが適しています。
- 結び目の中心、糸が交差している隙間に、針の先端を慎重に差し込みます。
- 1本目の針で隙間を少し広げたら、もう1本の針も別の場所から差し込みます。
- 2本の針を、結び目の中心から外側に向かって、てこの原理で少しずつこじ開けるように動かします。
- 結び目が少しでも緩んだら、あとは指先や爪で解くことができます。
針の先端で毛糸の繊維を割ってしまわないように注意が必要です。あくまで糸と糸の「隙間」を狙うのがコツです。
その他の方法
- 目打ちや安全ピンの先端:針がない場合でも、同様に先の細い道具で代用が可能です。
- 水で濡らす:(糸の素材によりますが)ウールなどの天然繊維は、結び目部分を少し水で湿らせると繊維が柔らかくなり、滑りが良くなって解けやすくなることがあります。ただし、色落ちや風合いの変化には注意してください。
固結びは、できてすぐの方が圧倒的に解きやすいです。編んでいる途中で意図しない結び目を見つけたら、後回しにせず、その場ですぐに解くことをお勧めします。
まとめ:マジックノットとは何か
この記事では、毛糸をつなぐ便利な方法であるマジックノットについて、そのやり方から他の結び方との比較、関連する疑問まで幅広く解説しました。最後に、記事の要点をリストで振り返ってみましょう。
- マジックノットは毛糸同士を結ぶ方法の一つ
- 引っ張るほど固く締まるため非常にほどけにくい
- やり方は左右の糸でそれぞれ片結びを作り合体させる
- 数回練習すれば初心者でも簡単に習得できる
- 結び目ができるため仕上がりの綺麗さは結ばない方法に劣る
- はた結びと比較すると結び目は少し大きくなる
- 強度の高さを重視するバッグやポーチなどに向いている
- 滑りにくいウールやアクリル毛糸との相性が良い
- シルクなど滑りやすい糸は糸端の始末に注意が必要
- 結び目のギリギリで糸端をカットでき糸始末が楽になる
- かぎ針編みでは段の変わり目に糸を継ぐ際に便利
- 結び目は編み地の裏側に来るように調整すると目立たない
- 糸が絡まった時は焦らず全体を広げてゆっくりほぐす
- 固結びは先の細い針を2本使うとほどきやすい
- 作品や用途によって最適な糸のつなぎ方を選ぶことが大切
かぎ針編み作家𝘮𝘰𝘬𝘢𝘢𝘵𝘦𝘢です。
編み図がなくても編める、気軽で自由なかぎ針編みを提案しています。
はじめての方でも、暮らしの中でそっと楽しめるものづくりを目指しています。