かぎ針編みを始めようと思ったとき、多くの人が最初に悩むのが道具選びではないでしょうか。特に、手軽に手に入る100均のかぎ針と、手芸店で販売されているメーカー品のかぎ針にはどのような違いがあるのか、気になりますよね。編みやすさや作品の仕上がりに違いが出るのか、初心者にとってはどちらを選ぶべきか、おすすめは何か、という点は大きな疑問だと思います。結論から言うと、長く快適に編み物を楽しむためには、メーカー品のかぎ針がおすすめです。この記事では、100均とメーカー品のかぎ針を様々な角度から徹底的に比較し、それぞれのメリット・デメリットを明らかにしながら、なぜメーカー品がおすすめなのかを詳しく解説していきます。
この記事でわかること
- 100均とメーカー製かぎ針の具体的なスペックの違い
- かぎ針の違いが作品の仕上がりに与える影響
- 初心者から経験者まで目的別の選び方
- 快適な編み物ライフのためのおすすめのかぎ針
かぎ針の100均とメーカーを比較!スペックの違い
- 号数が同じでもフックの大きさが違う?
- 仕上がりを左右するフックの1mmの差
- 重要な針軸の太さは同じなのか検証
- ゲージがずれる意外な原因とは
- 編み心地に影響する針の滑りの違い
- 糸の素材と針の表面加工との相性
号数が同じでもフックの大きさが違う?
かぎ針を選ぶ際、まず目にするのが「5/0号」や「7/0号」といった号数表記です。この号数は針の太さを示す規格であり、基本的にはどのメーカーでも同じ太さになるように作られています。しかし、実際に編み心地や編み目の大きさに最も影響を与えるのは、糸を引っ掛ける「フック」と呼ばれる先端部分です。
一見同じに見える100均のかぎ針とメーカー品のかぎ針ですが、このフック部分の形状や大きさに微妙な、しかし重要な違いが見られます。特に100均のかぎ針は、メーカー品に比べてフック部分がやや大きく、深めに作られている傾向があるようです。このわずかな違いが、後述する仕上がりサイズや編みやすさに大きく関わってきます。
かぎ針の号数とは?
かぎ針の号数は、JIS規格によって針軸の直径が定められています。例えば、レース針、かぎ針でそれぞれ規格が異なりますが、一般的なかぎ針では以下のようになっています。
号数 | 直径(mm) |
---|---|
2/0号 | 2.0mm |
3/0号 | 2.3mm |
4/0号 | 2.5mm |
5/0号 | 3.0mm |
6/0号 | 3.5mm |
7/0号 | 4.0mm |
このように、号数はあくまで針軸の太さの基準であり、フック部分の形状までを厳密に規定するものではありません。
仕上がりを左右するフックの1mmの差
では、フックの大きさの違いは具体的にどれくらいなのでしょうか。実際に100均(ダイソー)のかぎ針と、多くの作家に愛用されているメーカー品(クロバー社のアミュレ)の同じ号数のものを測定してみると、フック部分の直径に約1mmもの差が確認できる場合があります。
たった1mmと感じるかもしれませんが、編み物におけるこの差は非常に大きいものです。フックが大きいということは、それだけ多くの糸をすくい上げ、大きなループを作ることになります。これが積み重なることで、同じ目数・段数で編んでも、完成した作品のサイズが設計図よりも一回り大きくなってしまうのです。
例えば、小さなモチーフを数段編んだだけでも数ミリの差が生まれ、ウェアやバッグのような大きな作品になると、最終的には数センチ単位の無視できない誤差となって現れます。
重要な針軸の太さは同じなのか検証
一方で、かぎ針の号数を規定している「針軸(シャフト)」部分の太さはどうでしょうか。この部分を測定すると、100均のものとメーカー品でほとんど差はなく、規格通りの太さであることが分かります。
このため、「号数表記」自体に間違いがあるわけではありません。しかし、実際に糸でループを作り、編み目を形成するのはフックと、フックから針軸につながる部分です。したがって、たとえ針軸の太さが同じでも、フック部分の形状が違えば、編み目の大きさが変わってしまうのは当然のことと言えます。
注意点:号数だけを信じてかぎ針を選ぶと、レシピ通りのサイズに仕上がらない可能性があることを覚えておく必要があります。
ゲージがずれる意外な原因とは
編み物のレシピには、必ず「ゲージ」が記載されています。これは、指定された針と糸で10cm四方を編んだときに、何目・何段になるかを示した設計図の基準です。このゲージに合わせて編むことで、レシピ通りのサイズの作品が完成します。
しかし、「指定通りの針と糸を使っているのに、なぜかゲージが全然合わない」という経験を持つ方も少なくありません。その原因は、編み方のクセ(きつい・ゆるい)だけでなく、使用しているかぎ針そのものにある可能性が非常に高いです。
前述の通り、100均のかぎ針はメーカー品に比べてフックが大きく、編み目が大きくなりがちです。レシピを制作したデザイナーがメーカー品のかぎ針を使用してゲージを取っている場合、100均のかぎ針で編むとゲージが合わなくなるのは必然と言えるでしょう。これが、ゲージがずれる意外な、しかし根本的な原因の一つなのです。
編み心地に影響する針の滑りの違い
かぎ針のスペックの違いは、仕上がりだけでなく「編みやすさ」にも直結します。特に大きな違いとして感じられるのが、針先の滑りです。
多くのメーカー品のかぎ針、例えばクロバー社の「アミュレ」などは、針先に特殊なアルマイト加工などが施されており、非常に滑らかな表面になっています。これにより、糸がスムーズに滑り、ストレスなく糸を引き抜いたり、ループに通したりすることができます。
一方、100均のかぎ針は、多くがアルミニウム素材そのままか、簡易的なメッキ処理のみです。そのため、表面に微細な凹凸が残っていることがあり、糸が引っ掛かりやすく、スムーズに編み進められないことがあります。この引っ掛かりが、編むリズムを乱し、余計な力を込める原因となり、疲れやストレスにつながります。
糸の素材と針の表面加工との相性
針の滑りやすさは、使用する糸の素材によっても体感が変わります。
例えば、コットン糸は湿気を含むと繊維が少し膨らみ、滑りにくくなる性質があります。このような糸を表面加工のされていない100均のかぎ針で編むと、摩擦が大きくなり、さらに滑りが悪く感じられることがあります。
逆に、アクリルやウール、アルパカといった滑りの良い素材の糸であれば、100均のかぎ針でも比較的スムーズに編めるかもしれません。もし100均のかぎ針を使っていて「どうも編みにくい」と感じる場合は、糸の素材を変えてみることで、編み心地が改善する可能性はあります。
とはいえ、様々な素材の糸で編み物を楽しみたいのが本音ですよね。どんな糸でも安定した編み心地を提供してくれるのが、やはり高品質なメーカー製かぎ針の強みと言えます。
比較からわかる100均とメーカー製かぎ針の選び方
- 初心者はまず100均のかぎ針から?
- 上達を目指す人におすすめのメーカー品
- きれいな編み目を目指すなら道具選びが重要
- 長く趣味を続けるための道具選び
- かぎ針の100均とメーカー比較の総まとめ
初心者はまず100均のかぎ針から?
編み物を始めたいと考えたとき、初期費用を抑えられる100均の道具は非常に魅力的です。「続くかどうかわからないし、まずはお試しで」と考えるのは自然なことでしょう。
100均かぎ針のメリット・デメリット
メリット
- 価格が安い:最大のメリットです。気軽に始められます。
- 入手しやすい:全国どこでも店舗があり、すぐに手に入ります。
デメリット
- 編みにくい:糸が滑りにくく、引っ掛かりやすいです。
- 疲れやすい:余計な力が必要になり、手が疲れやすい傾向があります。
- 仕上がりが不安定:ゲージが狂いやすく、作品が大きくなりがちです。
- 挫折の原因に:編みにくさから、編み物自体が楽しくないと感じてしまう可能性があります。
結論として、100均のかぎ針は「編み物というものを一度体験してみる」という目的であれば選択肢の一つになります。しかし、もし少しでも「上手になりたい」「作品を作ってみたい」という気持ちがあるなら、初めからメーカー品を選ぶ方が賢明です。
上達を目指す人におすすめのメーカー品
一方で、メーカー品のかぎ針は、上達を目指す人にとって最高のパートナーとなってくれます。価格は1本あたり数百円からと100均に比べて高価ですが、それに見合うだけの価値があります。
メーカー品かぎ針のメリット・デメリット
メリット
- 非常に編みやすい:針先の滑りが良く、スムーズに編み進められます。
- 疲れにくい:人間工学に基づいたグリップなど、長時間の使用でも疲れにくい工夫がされています。
- ゲージが安定する:精密なフック形状により、編み目が揃いやすく、ゲージも安定します。
- 上達が早い:ストレスなく編めるため、練習に集中でき、結果的に上達が早くなります。
- 満足度が高い:きれいな作品が作れるため、達成感や満足感が高まります。
デメリット
- 価格が高い:100均に比べると初期投資が必要です。
- 専門店に行く必要がある:手芸店や大型の文具店などで購入する必要があります。
特におすすめなのは、主要な号数が揃ったセットを購入することです。バラバラに買うよりもお得ですし、様々な作品に挑戦できるようになります。良い道具は、あなたの編み物ライフをより豊かで楽しいものにしてくれますよ。
きれいな編み目を目指すなら道具選びが重要
編み物の魅力の一つは、均一で美しい編み目が並んだときの達成感です。編み目が不揃いになってしまう原因は様々ですが、その一つに「道具」が大きく関係しています。
滑りの悪いかぎ針を使うと、糸を引き出す際に余計な力が入ったり、逆にゆるんだりしてしまいます。この力のムラが、そのまま編み目の大きさのムラとなって現れるのです。きれいな編み目を作るには、「常に一定の力で、スムーズに針を運ぶ」ことが不可欠であり、それをサポートしてくれるのが滑りの良いメーカー製のかぎ針です。
道具を変えるだけで、驚くほど編み目がきれいになることも珍しくありません。もしご自身の編み目に満足できていないのであれば、一度道具を見直してみることを強くおすすめします。
長く趣味を続けるための道具選び
どんな趣味でも、長く続けるためには「楽しさ」と「快適さ」が重要です。編み物において、その両方を左右するのが道具です。
編みにくい道具でストレスを感じながら作業を続けていると、次第に編み物そのものから足が遠のいてしまうかもしれません。逆に、手に馴染む快適な道具を使えば、編むこと自体が楽しくなり、次から次へと新しい作品に挑戦したくなります。
メーカー品のかぎ針は、確かに初期投資としては高く感じるかもしれません。しかし、それは長く快適に趣味を楽しむための投資と考えることができます。耐久性も高く、一度購入すれば何年も使い続けることができるため、長期的に見れば決して高い買い物ではないでしょう。「安物買いの銭失い」という言葉があるように、最終的に満足度の高いメーカー品に買い替えることになるのであれば、最初から良いものを選んだ方が結果的に効率的です。
かぎ針の100均とメーカー比較の総まとめ
この記事で解説してきた、100均とメーカー製かぎ針の比較ポイントを一覧でまとめます。
- 100均とメーカー品では同じ号数でもフックの大きさが違う
- フックのサイズ差は作品の仕上がりサイズに大きく影響する
- 針軸の太さはJIS規格に準じており両者に差はほぼない
- レシピ通りのゲージにならない原因はかぎ針にある可能性が高い
- メーカー品は針先の滑りが良くスムーズに編める
- 100均の針は糸が引っ掛かりやすくストレスを感じることがある
- 針の滑りは糸の素材との相性によっても体感が変わる
- 初心者が「お試し」で使うなら100均も選択肢の一つ
- ただし編みにくさが原因で挫折するリスクもある
- 上達したいなら最初からメーカー品を選ぶのがおすすめ
- メーカー品は編み目が揃いやすく作品がきれいに仕上がる
- 人間工学に基づいたグリップは長時間の作業でも疲れにくい
- 良い道具は編む楽しさを引き出し上達を早めてくれる
- 初期投資は高くても長く使えるためコストパフォーマンスは良い
- 趣味として長く続けるなら快適な道具選びが何より重要
かぎ針編み作家𝘮𝘰𝘬𝘢𝘢𝘵𝘦𝘢です。
編み図がなくても編める、気軽で自由なかぎ針編みを提案しています。
はじめての方でも、暮らしの中でそっと楽しめるものづくりを目指しています。